COLUMN
コラム歯科治療における成功の可否を決める要素の多くは患者によるメインテナンスに関係します。
すでに治療が終わった歯も同じです。
そこで今回は入れ歯や差し歯のメンテナンス法として患者へ説明しやすい言葉やどのようなところに注意して話を組み立てれば良いか紹介していきます。
我々、歯科医師であれば入れ歯で100%の咀嚼は難しいとわかりますが患者はそうではありません。
100%食事を楽しむことができると考える人が一定数いるのです。
そこでまずは入れ歯の構造から説明しましょう。
総義歯であれば上顎の場合、粘膜と吸着しているだけで安定している旨、下顎であれば歯槽堤の高さに依存している旨を説明しましょう。
おおよそ授業では天然歯と比べて総義歯で咀嚼力が1/10程度である旨も説明しておくと良いです。
上顎前歯部では、下顎前歯の突き上げ防止で咬合を甘く設定している場合があります。
そのようなケースでは、麺類が噛みにくいという訴えを患者がしてくることがあります。
麺類を噛み切るのか、下顎からの突き上げを容認するかどちらか患者に選んでもらう必要が出てきますね。
差し歯は名前が一人歩きして、歯茎の中の歯を指していると認識している人がいます。
他にもメタルコアの存在を忘れて、歯の中に歯を差し込んでいると思っている人もいるのです。
また、一度治療が終了すれば根尖病巣が消失する・虫歯が再発しないと思う人もいますがそうではない旨もしっかりと伝えましょう。
入れ歯のメインテナンスで重要なのは咬合調整と清潔保持です。
毎日使用する入れ歯も患者だけのケアでは歯石がついてしまいます。
定期的に歯科医院で超音波洗浄をする重要性を説明しましょう。
来院してくれれば毎月口腔リハビリテーションが算定できるため、毎月通ってもらうことを重要視しましょう。
咬合調整も同様です。
毎日使用することで咬合変化が起きるため定期的に歯科医院で咬合をチェックしましょうと提案すれば毎月コンスタントに来院してくれます。
部分入れ歯の場合、残存歯のチェックと清掃を理由に患者教育をすればコンスタントな来院につながります。
差し歯のメインテナンスで重要なのは、歯のクリーニングと歯肉退縮です。
やはり歯にプラークがついたままでは虫歯リスクが高くなってしまいます。
定期的に歯石除去やPMTCでプラークのつきにくい歯を作りましょう。
FMCやレジン前装冠などは歯肉縁下にマージンを設定してセットしますが、加齢とともに歯肉退縮が起きてマージンが縁上にくることも説明しておきましょう。
そのためにも歯肉退縮のスピードを低下させるための清掃や縁上に出たタイミングで早めに補綴物を再製すると良いなど説明しておくと患者も納得して治療へ参加してくれます。
入れ歯には新製有床義歯管理料の縛りが発生します。
冠に関してはクラウン・ブリッジ維持管理料の縛りが発生します。
それぞれ、半年と2年間の縛りがありその期間中は新製ができません。
この期間中に破損などが起きると自費診療にて対応しなければいけない旨を患者へ伝えておきましょう。
特に下顎の遊離端症例ではレジン床の割れるリスクが高い傾向があります。
CAD/CAMでは大臼歯部において割れるリスクが高い旨を伝えておきましょう。
事前に予防線を張ることで患者信頼を損なわずに済むのです。